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6月 1日 (第289回)

観察窓に初顔の生き物  昆虫のゲンゴロウ現れる

 千歳川に生息するウグイの中で、オレンジ色の婚姻色が現れた個体(通称アカハラ)が見られるようになりました。例年、観察窓の前では6月から7月にかけて産卵が見られ、中でも昨年は大産卵が繰り広げられていました。今年もそのような光景が、見られるかもしれません。
 先日、観察窓に初顔の生き物が現れました。魚ではありません。昆虫のゲンゴロウです。
 ゲンゴロウは、流れのゆるやかなため池のようなところにいます。ですから、水に流されないよう壁にひっついている姿を見つけた時は、大変驚きました。その後、しばらくたって再び観察した時は、もうその姿がありませんでした。きっと、どこかへ飛んでいったのでしょう。
 時として、思ってもみない生き物が現れる観察窓。だからこそ、毎日の観察も楽しいのです。
 さて、今は魚にとって、産卵の時期でもあります。展示魚の中でも、お腹の辺りがかなり膨れたメスなどがいたりします。
 先週イトヨの水槽掃除をしていた時、うっかりと巣を壊してしまいました。イトヨはオスが鳥の巣のような巣を作り、メスをおびき寄せて巣の中で産卵させ、その後オスがふ化するまで世話をします。オスが胸ヒレを左右に動かしながら、卵に水を送る姿は、実に健気だなあと思います。
 私のせいで巣から飛び出た卵は、他のイトヨたちがつついて食べようとしたので、卵を取り上げ別な水槽で飼育することにしました。しかし、水まわりが悪かったせいもあり卵に水生菌が付いてしまい、ふ化したのはほんの数尾だけでした。残念です。
 展示している水槽では、卵が他の魚によって捕食されたりと厳しい状態です。今後も親や卵を別な水槽に移したりして、無事に育てたいと考えています。

(学芸員 荒金 利佳)

観察窓のゲンゴロウ

6月 8日 (第290回)

コレゴヌス展示  今後、魚の名前変更も

 5月17日からエントランス円形水槽にコレゴヌスが展示されています。銀色に光る姿が美しいサケの仲間コレゴヌス属の魚です。ヨーロッパが原産とされ、ロシアや北米の内水面では重要な水産資源となっています。白身の魚で、小骨が少なく、脂肪分が適当にあり、刺身をはじめどんな料理にも適しているようです。
 養殖対象魚として日本に導入されたのは昭和元年(1926年)。その後、北日本各地で養殖が試みられています。学名(全世界で統一された名前)はコレゴヌス・ラバレタス・マレーナといいます。一般的な和名(日本での名前)は「シロマス」ですが、長野県を中心とした養殖魚には「シナノユキマス」、北海道での養殖魚には「キタノユキマス」という名前が付けられ、それぞれの地域で生産と消費の拡大が図られています。
 ところで、問題はふるさと館でこの魚を展示するときの和名です。一般的には標準和名(日本全国で統一された名前)が用いられますが、この魚にはそれがありません。産業的に有望種であることから、それぞれの地域での思惑もあります。とりあえずコレゴヌス属の魚であることから、ふるさと館では「コレゴヌス」と表記していますが、実は道内でも、このマレーナ種以外にペレッド種、ムクスン種が育種されています。これらはどれもコレゴヌス属であることから、今後これらの種を展示するときの名前をどうするかが新たな問題になります。
 このような和名の混乱を解決すべく、日本動物園水族館協会では、3年前から各動物園水族館で展示されている動物について共通の和名を表記しようとその選定作業に入っています。今後、ふるさと館でもこの基準に従って何種類か段階的に魚の名前が変更されることとなります。
 人間たちの混乱をよそに、エントランスのコレゴヌス君たちは「それでも僕は僕」と自信たっぷりに悠然と泳いでいます。

(主任学芸員 遊佐 清明)

コレゴヌス

6月15日 (第291回)

魚骨がつぶやく  −世界に発信する情報−

 考古学の世界、特に諸外国の考古学には実にいろいろな研究分野があります。日本の考古学は、みなさんがよく知っている土器や石器といったものを多くの人が研究しています。もちろん、大昔の人が自らの手でつくりあげた土器や石器はたくさんの情報をもっていて、それを読むことによっていろいろなことがわかってきました。
 でも外国に目を向けると、遺跡からみつかるいろいろな種類の遺物を研究する分野があることがわかります。そのなかの一つを紹介しましょう。アルファベットの大文字で「ICAZ」と表されるのがそれです。これは「国際考古動物学会議」と訳しましょう。遺跡から出土するさまざまな動物の骨の研究をしたり、その成果を発表しあったりする団体です。今から30年前にハンガリーのブダペストで開かれた国際シンポジウムがそのはじまりでした。
 ICAZの国際会議が4年に1回、会議に向けた国際委員会が2年に1回世界各地を会場にして開催されます。
 このICAZは、さらにたくさんの部会に分かれて活動しており、そのシンポジウムも世界各地で毎年開かれ、活発に活動しています。その中にFRWGがあります。これは「魚骨研究部会」と訳しましょう。この部会は遺跡の魚骨を分析するグループです。
 海に近い場所や川・湖に面した場所の遺跡からは必ず魚の骨がみつかります。ずっと内陸でさえもたくさんの骨が出ます。これはほとんどがサケです。このように、動物の骨でいちばん多くみつかるのが魚骨であり、またそれがもつ情報量はとても大きなものがあります。ですからICAZの各部会の中でFRWGが最大の規模を誇ります。
 今年のシンポジウムは10月8日から15日までニュージーランドで行われます。日本のサケ、ポリネシアの漁労、メキシコの古代魚、カリブ海のサメ漁など世界中の魚骨の情報が飛び交うでしょう。私も参加する予定で、その成果を来年のふるさと館のオープン展につなげたいと思います。http://www.nmnh.si.edu/icaz/にアクセスしてみてください。ICAZの世界が広がります。

(学芸員 高橋 理)

ICAZのホームページの扉

6月22日 (第292回)

ウグイの産卵始まる  窓枠の天井にはトビケラの卵

 17日の朝、千歳川水中観察窓ではいつもよりウグイの数が多いような気がしました。外へ行き、インディアン水車橋から川をのぞいたら、大きなウグイの群れがあります。ウグイの産卵が始まったのでした。
 昨年は、窓前で産卵を行っていましたが、今年は窓から少し上流で産卵しています。なぜでしょう。それは、砂利の積もり具合の違いにありそうです。
 昨年の場合、窓前には砂利がかなり積もり、アクリル面から奥へ行くほど砂利が堆積して「駆け上がり」状態ができていました。それが、ちょうどウグイたちにとってよかったのでしょう。今まで見たことのないような、大産卵を繰り広げていたのでした。
 しかし、今年の窓前は砂利があまり堆積しておらず、水深も昨年より深くなっています。実際今年の産卵を橋の上から見ても、砂利の「駆け上がり」部分でよく行われているように思いました。少しの環境変化でも、生態に影響を与えるものなんだと実感します。
 さて、このように観察窓はウグイばかりが目に付くのですが、ふと窓枠の天井部分に目をやると、ゼリー状の袋がたくさんぶら下がっています。そして、そのゼリー状の中に小さな粒がたくさんあります。これは、トビケラの仲間の卵と思われます。
 トビケラの幼虫は、水中で過ごします。よく千歳川でも、小石や水草などをまとった水中の「みの虫」を見ますが、これらがトビケラの幼虫です。そして親になると水上へ出て、飛び回ります。
 今でこそ言えますが、私はトビケラの成体を蛾の一種かと思っていました。それがトビケラだったと分かり、恥ずかしい思いをした覚えがあります。
 窓から見える卵は、エグリトビケラの仲間のようです。親は水中へ潜り卵を産むわけですが、いつかその瞬間を見てみたいなあと思います。

(学芸員 荒金 利佳)

トビケラの卵

6月29日 (第293回)

オニヤンマの羽化観察  飛行は王様の風格

 千歳川水中観察室に設置されている水生昆虫水槽では、先日、コオイムシのふ化やオニヤンマのヤゴがトンボになる羽化などが観察されました。
 6月15日の朝、卵を背負ったコオイムシのオスを見ると卵の殻が細長く伸びて先端で破れているのが確認されました。やっとの思いで、親の形そっくりの体長2_程の黒い幼虫を見つけることができました。図鑑などによると、二週間前後でふ化するとありますが、このコオイムシたちは5月24日に採集したものですから、ふ化までに23日以上を要したことになります。寒い北海道ではふ化に要する日数が多いようです。その後、卵を持った4個体から次々と幼虫が生まれています。その様子は
今でも観察することができます。
 6月27日の朝、オニヤンマがヤゴからトンボに羽化していました。腹部(普通しっぽといわれる部分)がまだ白っぽいほかは翅(はね)もすっかり伸びて立派なオニヤンマになっていました。日本全国に分布し、日本に生息する約200種のトンボ類の中で最大の種類です。黒地に鮮やかな黄色のストライプを「鬼のパンツ」に見立てたのがその名の由来といわれています。
 平坦で直線的な山道を、地面から約50cmという間隔を保ちながら、道と平行に一定速度で飛んできます。山道が広い空間に出たところで急上昇し、反転して再び同じコースを逆に飛んできます。他のトンボ類に比べ、その堂々とした飛行は、まさに王様の風格があります。
 子どもの頃、このオニヤンマを捕らえるべくさまざまな方法でトライしました。虫取り網を飛行コース上の地面において、ジッと待ちます。網の真上を通過する直前にすくい上げて捕獲します。この方法が一番捕獲できました。失敗するとコースに戻ってこないので、一発勝負でした。
 この夏、また野山でトンボたちのさまざまな飛行に出会えるのを楽しみにしています。

(主任学芸員 遊佐 清明)

羽化したオニヤンマ


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